風を切る音だけが


耳を支配する。





一斉に散った桜の花びらの中に

紅い、紅い花びらも


宙を舞った。





その情景を、愛しむように微笑み見つめる


少女が、ひとり。






「綺麗」




呟いた声は、誰もが身震いするほど美しい。




少女は、その手に握った刀を


鞘に納める。





そして、ふわりと軽い髪を靡かせて


機微を返した。







─────……ある、夜の日の、出来事である。