先生のこと、忘れられたかって聞かれると
まだ忘れられてない。

けどもう心は痛くない。

これは田中くんがくれる魔法なのかな。

『ねぇ』

「ん?」

"好きって言わないの?"

それを思って見つめる。

「なんかついてる?」

なんて言って笑った彼。

いや。こんな優しい田中くんなんて
田中くんじゃない。

『…嫌い。今の田中くんは嫌い。前の強引で生意気なあなたはどこに行ったの!?』

あの時みたいに走る。

「どうしたんだよ、急に」

こんな時も彼は冷静だった。