「どれどれ、澪華はどーこだ」
どーこだ、なんて貴様は子供か。
『ほら、あそこ』
お子ちゃま夏穂のために教えてあげる。
「澪華ー!」
「夏穂、姫依!」
澪華の元へ駆け出す私達。
『澪華を迎えに来た…んだけど。夏穂、帰るよ』
「えー!」
『早く。明日学校でね、澪華』
「え、うん…」
なんでー!どうしてー!と言ってる夏穂の手を引いてスタスタと私は歩く。
夏穂はほんとに澪華と帰りたかったみたい。
そんなの…私だって澪華と帰りたい。
でもさ、遠慮ってのも必要だと思うの。
『彼氏』
「…そっか。」
"彼氏"その単語だけで夏穂は理解してくれた。
「あーあ。澪華、幸せそうだなー」
『当たり前でしょ、内山先輩は澪華のずっと好きな人だったんだから』
「そうだけどさ。」
私と夏穂、肩を並べながら澪華のことを話していた。
『夏穂も彼氏、作ればいいじゃない』
「んー、いらない、かな」
なんじゃそら、というツッコミを心の中でして
夏穂の頭を軽くコツン、と叩いた。
「じゃあさ、姫依は作んないの?」
『興味ないし。そもそも恋愛したことないから』
「はぁ!?なんで!?」
したことがない、という私にもったいない!と言った夏穂
「だったらさ、山原先生は?かっこいいし」
『何言ってんの、あの人は先生でしょ』
"山原先生"それがあの人の名前だった。
「えー、好きなら先生とか関係ないじゃない」
『ダメよ。バレたら元も子もないわよ』
そうよ、絶対ダメ。
『夏穂?』
急に黙った夏穂の顔をのぞき込む。
「やっぱり…ダメ…か」
『夏穂、あんたまさか…』
「うん、私ね。橘先生がずっと好きで…」
『橘先生って英語の…?』
私の質問にこくん、と頷いた夏穂は今にも泣きだしそうな顔をしている。
『うち…おいで。』
夏穂のことが心配でたまらないよ……

