「えー、これから着任式を始める。」
着任式ってあれでしょ?私、結構好きだよ。
だってさ、信頼できる先生に出会えるチャンスの第一歩だから、ね。

「着任される先生方は舞台にあがってください」
校長の言葉にあがりだす先生方。

「ね、あの人かっこよくない?」

「だよね!私、狙っちゃおうかな」

「あんた彼氏いんじゃん!」

「あれは別にいいの!」

「何それ、彼氏かわいそー」

みんなが口をそろえて"かっこいい"と言う人は…

─ 「…運命って信じる?」─

そう言ったあの人だった。

(トクン)

心臓が一つ音をたてた。

『(この気持ち…何?)』
恋、じゃない。そう、きっと。あの言葉を聞いたから気になるだけ。

「生徒起立。」
自分に言い聞かせているうちに着任式は終わっていた。



「疲れたー」
こんな発言をしたのは嶋田夏穂。
妹みたいで可愛いやつ。
絵が上手。え?自己紹介はいらないって?
つめたいなぁ~。まぁ私自身するのもめんどくさいけど一応ね。

「誰と話してんのよ」

『向こうの世界のお方』

「…頭打っておかしくなった?」

『まさか。その役は君だけで十分だよ、夏穂さん』

「なんだとー!」
こうやって反応してくれるんですよ、この子は。だからついついからかいたくなっちゃって。

『まぁまぁ。夏穂は私の事大好きだもんね。こんなことで怒んないよね?』

「え…いや、その…そんな顔して言われたら…」
ニヤリ。ほんと純粋で大好きだよ。

「…あああ!!!もう可愛い!!!」
…抱きついてきたのは予想外だったな。

『や、ありえないから。うん』

こんなふうに夏穂とグダグダしているうちに下校時間。
よし、澪華を迎えにいくぞ!