~side 夏穂~
「大丈夫、自分を信じて」
初めてみた姫依の真剣な顔。
私はその言葉を信じて橘先生に声をかける。
『先生…』
「嶋田さん」
先生を目の前にすると何も言えない。
『あ、の……………』
なにか言わないと………!
でも声がでなくて。
「ナツっていうんです、あの日の子犬。」
橘先生が口を開いてくれたおかげで私は落ち着いた。
『ナツ…かわいい名前ですね。』
「いえ、生意気ですよ。なんでも噛むし。困ったものです。」
そういう橘先生は笑っていた。
ああ、私この笑顔が好きなんだ。
『先生、好きです。一年前からずっと…』
「え…?」
その声で気づく。
私…告白、しちゃったんだ…。
恥ずかしさと先生の返事が怖くて私は
『ごめんなさいっ…』と、言って走った。

