きっかけは、友達の花凜と話しているときだった。


「ねえ、由姫。好きな人とかって、いる？」
「なに？いきなり」
「いいから！ねえ、いる？」

実は、はっきり言ってあまり興味がない。

でも、花凜の熱意に負けた僕は、話題を合わせることにした。

「別に、いないよ。花凜は？」

そう聞くと、花凜は、急にこっちによってきた。

「実はね…いるの。小学校の時から、ずっと好きで…」
「そうなんだ。同じクラス？」
「う、うん…。留衣くんって言うんだけど…」
「ああ、僕の後ろの席の人」

佳山　留衣。

僕の知っている限りでは、頭がよく、学年でも人気が高い。

そんな人を花凜は好きになったようだ。

「由姫は席が近いでしょ？何とか、留衣くんのこと知れない？」
「それって、情報を集めるってこと？」
「うん。たとえば…好きなタイプとか」
「…まあ、できるだけやってみるよ」

すると、花凜は笑顔で、

「本当！？ありがとう！」

と言った。