ただ、偶然だった。




バーの店長、直人さんが最近毎晩俺の為に作ってくれるカクテルが、青い海の底みたいだったから。


海の底が見たかった。


華乃と約束した水族館が思い浮かんだ。



ただそれだけだったのに…



偶然会った驚きより、会えた嬉しさが勝ったから、俺の口元は緩んだ。



それと反対に華乃の笑顔は引きつっていた。



「何してんだ?一人か?」



「うん。この前店長に連れてきてもらって…この水槽気に入っちゃったの。大樹は?」




店長…デートって事か?



「そうか。俺は…海が見たくて…かな。」


未練がましくお前との約束がなんて言えない。




「海?だったら直接海行けばいいのに。」


クスっと華乃が笑って、場が和んだ。


「いいんだよ近場が。この水槽で十分!」



「だね。本当に綺麗…」



華乃は目を細めて、羨ましそうにイルカを見た。









「あ!華乃、ここでチョット待ってろ。」




「ん?」