「オレさ、もう少しだけ自分を試そうと思うんだ。もう少しだけ、いろんなことに挑戦したい」
「いろんなって、俳優とか?」
「もちろん俳優もだし、知識もいろいろ増やしたい。それで……」
「それで?」
堤防につながるコンクリート階段の上で、私と十は立ち止まった。
見上げる十の顔に、ドキドキする。
「認められたいんだ。立派だって、男らしいって」
うつむき様に、十が真剣な声で話した。
今までは見られなかった十の姿に、ほんのり酔いそうだった。
「そうだね…、沢山の人に認めてもらえるといいよね」
なだめるようにやさしく返して、十に酔っていきそうな自分を、正気に戻そうと空を見上げた。
「沢山じゃなくていい。……一人で、いいんだよ」
月を隠す雲に救われた。
月明かりの下じゃ、流れる涙が目立ってしまう。

