ファンレター




今日だけは特別と、夜の外出を認めてくれた両親に珍しく感謝の気持ちを感じる。

ちゃんと涼ちゃんを守ってあげるのよ、と十に言い聞かせた十の母親の言葉には、恥ずかしくて顔を上げられなかった。



十と歩く静かな道。

この時間が、現実のものじゃないかもしれないという不安が、どこからか押し寄せてくる。



そして、そんな不安をかき消すように、強く握られる二人の手。



神様…、どうかこの時間が終わりませんように。



生温い風に揺れる、十の前髪。

懐かしい十の横顔。



私は錯覚してたのかもしれない。

私も十も、昔と全然変わらない。

このままずっと、一緒にいられるんだって。



想像してはいけない理想の風景が、頭を何度もよぎった。



「少しはオレの事、立派になったって思ってくれてる?」



お褒めの言葉を求める子供のような十に、胸がぎゅっとなる。

ほら、変わらないよね、きっと。



「少しはね」



素直になれない自分に、ちょっと苛立った。

私こそ、もっと大人になれって感じだ。