テレビや雑誌で見てた十は、少し大人っぽくなったように見えてたけど
実際は元の幼い雰囲気を持ったままの十だった。
私はホッとしてた。
東京に行ってから、十が変わってしまったんじゃないかって、ずっと不安だったから。
……変わる?
そういえば、私は十に変わってほしいと思ってた。
子供っぽくて、いつでも私の後をついて来るばかりの十に、もっと男らしくなってほしい、大人になってほしいって…
それが、どういうわけかな。
変わらない十を求める、私がいる。
「ほら、涼!十ちゃんばかり見てないで、ジュースでも出してあげなさい」
「みっ、見てないってば!」
父にはどうもデリカシーというものがなさ過ぎる。
手に持った愛用の十うちわが、私と冷蔵庫の間を往復した。
十には冷蔵庫の中が見えないように、私はほんの少しだけ開けたドアからあのドリンクを取り出した。
絶対知られたくないけど、私の定番になってた十CMの清涼飲料水が、ボトルラックを埋めつくしてたのだ。
これを出すのはどうも気が進まないけど、今はこれしかない。
でもバレたら、また十に調子のついた言葉を浴びせられるに決まってる。
意味があるのかないのか、私はせめてラベルを見られることがないようにと、中身をコップに移して十に差し出した。

