「…っ、ごめんなさい。なんか、また…泣いてばっかり。うまくいかないこともあるってわかってるのに、人って悲しさに耐えられないみたいで。…きっと布施原さんも……」
「私は、耐えてたつもりよ。だからこうして、今もこの世界に生きてるの。信じられなくなった時は、どうしようもないくらい乱れてしまったけど、また信じようって決めたから。
会えない所にいても、私からはあの人が見えなくても、あの人には私が見えてる。見続けてもらえるから、どんなにつらくてもこの世界で頑張れるのよ」
十から私が見えなくても、私はずっと十を見続けられる。
フフッ…
布施原さんが笑った。
「でもね、正直若い時はそれで良かったの。歳を重ねるたびに、自信がなくなって…。こんなみっともない姿なら、見せたくないって思う時があるわ。プライドが邪魔するのね。あの人の目に映る私は、いつまでも美しい女優でなければならないって」
「直接会ったらいいのに…。おじさんもきっと、待ってるから…」
言いかけた私に、多美が思わず立ち上がり腕を引いてきた。
「それは涼が言うことじゃないし、人違いかもしれないことを忘れないでよ。あくまでも、涼の勘でしかないんだから」
「でも…」
耳元で言われたって、こんなことじゃ、全然前に進まない。
私の中から、入り交じった感情が押し出された。
自分の想いも、全部含めて。
「だって、おじさんのことでしょ?この記事のこと、布施原さんが想ってる人だって、全部おじさんの事でしょ?おじさん、今でも待ってるよ。私にはわかるもん。私も…、私も十のこと、すごく好きだから」

