驚いて声を上げた私。
もう一度大きくため息をついた柿坂君は言う。

「裁判所の訴状が届かないから、俺の住所を教えろって、どうも店長に言ったみたいで・・・・
それで店長があっさり教えちゃった?」

「その店長も最悪!!!!!!!!!!」

「店長もそうだけど、その女も最悪で・・・・
玄関先でにっこにこ笑いながら、『みーつけた!』って言ったんだ・・・
その後、ストーカー化して・・・」

「うえぇ!?なにそれ怖い!!!」

「それで、結局、アパートを引き払うハメになって、
でも、住所がないと、仕事も採用してもらえないし・・・
かーちゃんには迷惑かけたくないし・・・
ホストでもやるしかないかな?とも思ったんだけど・・・
真面目に女が信用できなくなってて、水商売もいやだなって・・・
それで、なんか、俺、めっちゃ路頭に迷って・・・」

「う・・・うん」

「最初は公園住まいだったんだけど」

「えぇ!?」

「なんか腹とか減ってゴミ置き場とかに出没してて・・・
それ冬場ですげー寒くて、俺、めっちゃ高熱出して・・・
ゴミ置き場で行き倒れたんだ・・・」

「・・・・・・・・」

こんなにカッコイイのに・・・なにその不幸!!?
私、一昨日まで、自分のこと一番不幸だと思ってたけど・・・
もっと上がいた!!

「柿坂君・・・大変だったんだね・・・ほんと。
なんか・・・同情する・・・」

「うーん・・・同情されるのも微妙・・・
でも・・・ボスも同情してくれたんだよ、きっと
だから拾ってくれたんだと、思う」

そう言って、少し情けなさそうな表情をしながら、柿坂君は小さく笑った。

「東郷さん?」

私がそう聞き返すと、柿坂君は小さくうなずく。

「行き倒れてたゴミ置き場・・・
たまたま、ボスの住んでるマンションのゴミ置き場で、そこに、深夜勤務明けのボスが 通りかかったみたいで・・・」

「え!?なにそれ、まさか、言葉通りに拾われたの!?」

「うん・・・・それで、とりあえず病院つれていってくれて、飯を食わせてくれて。
どうもすいません・・・って言ったら、病院代と飯代を返せって・・・」

「ぶっ・・・」

私が素っ頓狂な声を上げると、柿坂君はおかしそうに笑った。

「働いて返せって・・・住所があれば面接できるんだろ?って」

「うん・・・」

「だから、そうですねって・・・・そしたら、ボスがここの倉庫の持ち主の知り合いで、交渉してくれて、作業員の仮眠室だったとこを無料で貸してくれることに・・・カスタマイズ自由だっても言われて」

「!?」

「で・・・ここを住所にして、強制的に清掃部門の面接を受けさせられて・・・採用されて、今にいたる」

「うわぁ・・・奇跡だね」

「奇跡だね・・・
仕事と住む場所はなんとかなったけど・・・
でももう・・・女の子は・・・ちょっと・・・」

「・・・いわゆる、女性不信ってやつになっちゃったのね?」

そこまで言って、私はある事に気いた・・・
待って、女性不信なはずなのに、この子、どうして私を家にあげてくれたんだろう?
まさか・・・
それって・・・
私が年上過ぎて、もう女として見られてないから!?