変わりゆく華たち 第一幕 散ル華






そうだ、思い出した…!



肩に覆われた腕をどけ、巧さんたちの方を振り向いた。





「どうして、俺が女だって分かったんだ」






すっかり忘れていたが、そのことが原因でここに連れて来られた。



「おー、すっかり忘れてたな。
そのことだがな、俺たちが呉服屋の子に生まれたからだ。」



呉服屋?



「呉服屋には色々なお客様が来るわ。
老若男女関係なくね。

私たちは小さい頃から
色々なお客様を見てきてるから、
男装、女装してる人は大抵見分けがつくの」



そういうものなのか?

なんだか凄いな。


呆気にとられていると



「けど、と言ったら変だけど、私たちはあなたのことを他の人に伝えないからね?」



だから安心してと付けたして言った。




…なんで、そこまでするんだ?


今日初めてこの町に来て、初めて話した赤の他人の俺なのに……


俺は二人を信用もしない、刀を抜こうとしたのに、どうしてだ?



「どうしてか、って顔してるな。」



ニヤリと笑っている顔。




「俺らが商売人だからとかそんなことじゃなくてな、この町に住む人としてだ。」



「まだ若い伊織ちゃんがそこまでするのには理由があるんでしょ?」 



そうだ、理由もなくこんな格好をしているのではない。


別に今更着物を着たいとも思ってはいないが、理由があるから男装をしている。