いや、分かるはずなんて無いはずだ。


自分の今の格好を思いだせ…


黒の長着と袴を着て、右腰には父様と母様の形見である2本の刀が挿してある。


髪だって一つに髪紐でくくっている。



…どうしてだ……?



「お、おいっ!!
刀から手を離せって!な?」



無意識に刀の柄に手が触れていた。


が、そんなことを言われても話せる状況ではない。



「一度、お店の奥へ行きましょう、ね?」



百合と呼ばれた女は俺の手を持ち、腕を引っ張って行く。


俺はされるがままに女に付いて行く。



「店の接客は……どうするつもりだ」




「ん?それなら、巧がやってくれるわ」




ニッコリと笑って同意を求めるように微笑んだ。




「フッ、さっきは悪かったな。百合とゆっくり話してこいよ」




その言葉を聞いてまた百合…さんは歩き始めた。




―――――



店の奥へつくと百合…さんは、お茶を出した。



「さっきはごめんなさいね?巧も悪気があったわけではないのよ」




…そんなことは俺には関係のない。


そもそもあんたらの言うことは信用性が何も無い。それが分かっている今、その言葉の何を信じろと?



「さっきの言葉を信じてないのね?
まあ確かにそうよね、今日初めてあった人だもの」



初めてでなくてもそうだ。


それに俺は………



「そうだわ!」



パンと手を叩くと立ち上がった。