「…用がないなら俺は帰る」
最悪だ。
こいつらといるだけで、嫌な記憶まで思い出してしまう。
だいたい昨日の夜あんなヘマをしなければ、此処にいなくてもすんだんだがな。
ハァ、腕が落ちたな。
此処を出たらとりあえず夜になるまで
〔甘味所 花〕でお茶をしてそこから
アイツらに剣術の稽古でも付き合ってもらおう。
そんなことを考えながら襖に手を伸ばした時、誰かなその手を掴まれた。
「ねぇ、どこに行くの?」
「帰るだけだ。手を離せ。
斎藤」
目を向けるとまた何を考えているか分からない笑顔で腕を掴んでいる。
腕を振りほどこうとしても、斎藤もそれなりの力が有るわけで、簡単に拘束を取ることができない。
「えー、だってまだ局長と副長の話は終わってないよ?」
「いっ…」
ギリギリと手首を締め付けてくる強さに、顔を歪ませる。
その小さな身体のどこにそんな力があるんだか。
