「神崎伊織〈かんざきいおり〉」
「伊織くんと言うのか…?うむ、いい名前だな!」
ニッコリと微笑みながら言う近藤さん。
その雰囲気は優しい父親そのものだ。
俺の父様もこんなふうに笑っていたのか?
「神崎、お前何処のもんだ。
昨日のアレを見る限りお前の強さは異常だ。
それに今朝の行動だってそうだ。なぜ逃げ出そうとした。
それは倒幕派に付いているからか?」
…こいつは馬鹿なのか?
昨日のアレを見たなら分かるはずだけどな。
というより、昨日なのか?意識を飛ばしてたから日付が分からなくなってきたな。
「ブッ!土方さん馬鹿なんですか?
あっ間違えました。馬鹿ですよね。昨日のアレをみたのにそれ言っちゃうんですか?
昨日長州の人間を滅多斬りにしたのはこの子なんですよ」
所々笑いを耐えながら言う沖田。
そして最後に小声で
「あ、土方さんには暗すぎて見えてませんでしたよね」
と言葉を添えていた。
その小声が聞こえたらしく、「総司」と肩を震わせながら怒りに耐えていた。
「俺は倒幕、佐幕も興味はない」
「あ?」
お前ら人間が何処でどんなふうに争うか、俺には関係ない。
ただ、関係のない者を巻き込まなければいい。
あんな事さえなければ、今ごろは……。
「どういう意味だ」
「どう意味も言葉通りだ」
