―――――――――――――――
とまあ、そんな事を考えている間に、此処まで連れて来られこんな事態になった。
「さっきから黙(ダン)りだな、テメェは口を利くことも出来ないのか?」
そんな挑発な俺が素直に話すとでも思っているのか?
少なくとも俺はそんなものに乗るつもりは無い。
ああ、けどあの弱い奴らは素直に乗ってくれたな。
「チッ。おい名前ぐらいは言えるだろ。お前の名は何だ」
「……」
静かな沈黙が続く。
俺だってあんたらに
名乗ろうと思えば名乗ることはできる。
だが、一体どこに『俺の名前は神崎伊織です』と自分の名を名乗るやつがいるんだ。
名というのは短い呪(シュ)。
その名を呼ぶだけで相手を縛ることだってできる。
よく知らない相手に簡単に名を教えて縛られるくらいなら、最初から教えないことにすべきだ。
「おい、さっさと答えたらどうだ。こっちだっていつまでも待ってられるほど、気は長くねぇんだよ」
「名を聞くときは自分から名乗る。これは人として常識なことであろう。あんたはそんなことができないのか?」
フッと鼻で嘲笑ってやる。
案の定ヤツは顔を真っ赤にして怒鳴りだした。
「テメェこの基に及んでなおふざけて−−−」
「すまなかった――――」
ヤツの声を被せるように、一言謝罪の声が耳に入った。
