ｽﾄﾚｲ･ｷｬｯﾄ☆ｼｭ-ﾃｨﾝｸﾞ･ｽﾀ-

　珠希が実家に帰ってからは、当たり前にひとりで起床して会社に出勤している。
　日曜日の今日は、久しぶりにぐっすり眠り気持ちいい朝をむかえた。陽射しがベットルームの中ほどまで射しかかり、春の匂いがしている。ぼくは重たい身体を白いシーツから起こして、シャワーを浴びるためにバスルームに向かう。リビングのフローリングが足先に冷たさを伝える。パジャマ代わりの白いＴシャツを脱ぎ捨て、スエットパンツとボクサーブリーフをいっきにズリ下ろして、ランドリーに投げ込む。深いブルーで統一されているバスルームに白い湯気が充満して、ぼくの身体を慰めるかのように包んでゆく。それにつれてまぶたがゆっくり見開いて視界が定まってくる。シャワーノズルから噴き出すしぶきが肌を叩き、身体中の血液までもが目を覚ます。肩先から胸をつたい、足の付け根から流れ落ちる。いつものシャンプーの嗅ぎ慣れた香りが気持ちを落ち着かせて、ぼくを眠りから覚めさせる。それと同時に意識が久留美を思い出させた。バスルームから生まれたままの身体で飛び出して、ぼくはリビングの充電器にセットされている携帯電話をチェックする。
　

　バスタオルで身体を拭いたけれどもフローリングにはバスルームから付いてきた水滴が飛び散っている。湿った身体を拭きながらバスタオルを腰口に巻く。濡れた手をタオルで擦り、高ぶる気持ちを押さえてメールＢＯＸを開けると久留美からのメールが届いていた。

「あっ、メールが来てる」

『おはよう！　今日は遠距離で付き合っている彼氏に会いにいきます。横浜まで。わたしは恵比寿に住んでいて、実家から出て来てひとりで暮らしています。ショーゴ君、宝石店で働いているんやね。すごいですねぇ。わたしを口説き落とすのは相当難しいと思うので、そのつもりでね（笑）今日はお仕事ですか？』