三上は仕事中だというのもすっかり忘れたのか、サイトに夢中。

「柏原さん、ここでSF見付けたら?」

 ぼくの顔を見ることもしないで話し掛ける三上。ぼくはSFということばに反応する。

「SF? 何それ?」

 ぼくは三上の顔を見ながら聞いてみた。三上の吸うタバコの煙りがゆっくりと模様を作り出している。

「SEX・Friendのことっすよ」

 三上は笑いながらぼくの顔を見る。そして片方の眉毛をつり上げながら、ぼくにひとつのメ−ルを送りつけてきた。メ−ルにはサイトのアドレスが明記されている。

「ここでいい娘見付けたらどうですか? このサイトで」

 確かに今、妻の珠希が居ない独り身の状態。
 寂しさ募り、今日ここに来た。

「携帯からしか入れないのか、そのサイトって」

「いや、そんなことないですよ。パソコンからでもいけると思いますよ」

 携帯を片手に操りながら、ことばを返す三上。そのまま立ち上がって仕事に戻る様子。

「柏原さん、ゆっくりサイトで遊んでいって下さいね。オレ仕事に戻るし。あ、鍵置いておくし、帰りにカウンタ−に届けといて下さい」

 ぼくはひとり休憩室に残されてしまった。そしてそのまま三上に教えられたように、サイトに入ってみようかと思ったのだが、珠希の留守中にそんなことをするのはどうかと思い、いや、留守でなくてもなのだが……。


 携帯電話をポケットにしまい込み、そのままMovie・onを後にした。マンションに着いてから思い出したのだが、三上と一緒に休憩室に入ったとき、お目当てのビデオを忘れてしまい、結局、何も借りていなかった。

「あぁ、三上とあんな話しをしていたから、すっかりビデオ借りるの忘れたよ。何やってんだか」

 ぼくは冷蔵庫からミネラル・ウォ−タ−を取り出して、そのままラッパ飲み。自転車に乗ったせいか、身体が汗ばんでいる。さっき三上の店で見掛けたこどもが眠ったか、なぜだか少し気になった。