誰も待つことのないマンションに今日も帰り着く。
「お帰り〜」
一瞬、珠希の声が聞こえたような気がしたのだが、それは気のせいで……。
冷え切った部屋。急いでエアコンのスイッチをONにする。
「う〜寒い」
いつもなら珠希が部屋を暖めてくれていたっけ。
悪阻のためとはいえ、次第に寂しさが募ってきた。コンビニエンス・ストアで買ってきた食材をレンジで温め、缶ビ−ルと一緒に流し込む。もちろんことば同士が交差することも無い孤独なディナ−。十五分で終了。
「……」
ひとりの空間がぼくを押し潰すように迫って来る。
耐え切れずにぼくは、自宅マンション近くに在るレンタル・ビデオ店に足を運んだ。
人恋しかったのだ。
黒のN3-Bに袖を通して、マンションの駐輪場からミニサイクルで出発。
寒さが肌に吸い付いてくる。大通りに差し掛かると目に入ってくる大きなネオンライト。くすんだオレンジが浮かんでいる。自宅マンションから自転車で五分のレンタルビデオ店、Movie・onの前には乱雑に置かれたバイクに自転車。端の方では電柱に倒れ込んでいるものもある。道端には空き缶にタバコの吸い殻。大手企業の進出激しいこの業界。チェ−ン展開は当たり前のご時世。そんな中、この店は店舗数を増やすことなく、細々と商売している。地域密着型店舗とでもいうのだろうか。
今時めずらしい手動の扉を開けると、暖房の熱風が襲ってくる。外の寒さとの温度差に驚いた。
店内には数人の客。毛のついたフ−ド・ジャケット、身体のラインを強調するタイトなボトムス。
みんな同じような服装で、ヘアスタイル。
足元にはちいさなチルドレン。親に連れられて来たようだ。うれしそうにト−マスのビデオを抱きしめている。
いつもの風景。いつもの景色。
ぼくはアリが巣に群がっているようなレジカウンタ−をくぐり抜けて、店内奥側にある洋画コ−ナ−に足を運んだ。
「お帰り〜」
一瞬、珠希の声が聞こえたような気がしたのだが、それは気のせいで……。
冷え切った部屋。急いでエアコンのスイッチをONにする。
「う〜寒い」
いつもなら珠希が部屋を暖めてくれていたっけ。
悪阻のためとはいえ、次第に寂しさが募ってきた。コンビニエンス・ストアで買ってきた食材をレンジで温め、缶ビ−ルと一緒に流し込む。もちろんことば同士が交差することも無い孤独なディナ−。十五分で終了。
「……」
ひとりの空間がぼくを押し潰すように迫って来る。
耐え切れずにぼくは、自宅マンション近くに在るレンタル・ビデオ店に足を運んだ。
人恋しかったのだ。
黒のN3-Bに袖を通して、マンションの駐輪場からミニサイクルで出発。
寒さが肌に吸い付いてくる。大通りに差し掛かると目に入ってくる大きなネオンライト。くすんだオレンジが浮かんでいる。自宅マンションから自転車で五分のレンタルビデオ店、Movie・onの前には乱雑に置かれたバイクに自転車。端の方では電柱に倒れ込んでいるものもある。道端には空き缶にタバコの吸い殻。大手企業の進出激しいこの業界。チェ−ン展開は当たり前のご時世。そんな中、この店は店舗数を増やすことなく、細々と商売している。地域密着型店舗とでもいうのだろうか。
今時めずらしい手動の扉を開けると、暖房の熱風が襲ってくる。外の寒さとの温度差に驚いた。
店内には数人の客。毛のついたフ−ド・ジャケット、身体のラインを強調するタイトなボトムス。
みんな同じような服装で、ヘアスタイル。
足元にはちいさなチルドレン。親に連れられて来たようだ。うれしそうにト−マスのビデオを抱きしめている。
いつもの風景。いつもの景色。
ぼくはアリが巣に群がっているようなレジカウンタ−をくぐり抜けて、店内奥側にある洋画コ−ナ−に足を運んだ。
