『香奈ちゃんおはよぅ』

声に振り向くと朝の光と冷たい空気に白く包まれた圭亮が土間の勝手口に立っていた。その姿はとてもキラキラとして眩しく綺麗だった。香奈は目を細めてその圭亮の姿を心に焼き付けた。

『圭亮君。おはよう』

『あれ？百合子ちゃんちの圭くん？』


紀子は空になった朝食の皿を流しに運びながら圭亮をマジマジと見詰めて微笑んだ。


『紀子おばちゃん。ぁあ…ご無沙汰しています』

何故か圭亮は言葉を噛みながら頭を何度も紀子に下げた。香奈は何故か分からず照れくさかった。

『あら、何時帰ってきたの？おばさん昨夜遅くに着いたから圭君帰ってきたの知らなかったぁ。百合子ちゃん元気な？おばぁちゃんがあんな事になって香奈は常ちゃん家に行かないって言うっておばぁちゃんが電話して来て心配やしって慌てて来たのよ、あっあらごめんなさい。1人話して』

紀子は一気にそう言うと恥ずかしそうに笑った。

その姿は何だかおばぁちゃんに良く似ていると香奈も圭亮も思った。


『お母さん。だぁれなん？』

彩未は紀子と圭亮の間に入って来て圭亮の顔を見上げた。


『彩未ちゃんやね？』

圭亮は流しで皿を洗う香奈の背中に声をかけた。香奈は手を止める事も無く流しで皿を洗いながら答えた。

『そうやで。彩未』

『彩未ちゃん初めましてって赤ちゃんの時に会ってるんだけど、香奈ちゃんの、お姉ちゃんの友達の川嶋圭亮です。よろしくね』

圭亮がそう言って差し出した右手を彩未は嬉しそうに両手で掴んで左右に揺らしながら。

『山口彩未です』

と可愛らしい高い声で答えた。そんな彩未の一挙一動が周りの緊張した空気を和らげそれが香奈は嬉しいと思った。