朝早くに笑い声で目が覚めた香奈はまだ覚め切らない頭をゆっくりと動かし土間と言われる座敷から降りおばあちゃんの家のキッチンに行った。テーブルの上には朝御飯が用意されていた。

『起きたんか?香奈、味噌汁とご飯は自分で入れて食べなさいや。バアは隣の常ちゃん所に大根届けてくるから』

そう言って自分の腹位ある太い大根をネコ車と言われる一輪の手押し車に数本乗せてさっきまで、庭で話をしていた隣の常ちゃんと行ってしまった。おばあちゃんのその後ろ姿を見送ると香奈はご飯の入っている釜の蓋を開けた。炊き立てのご飯の甘い香りが湯気と共に香奈の顔を柔らかく包んだ。

香り米のほのかな匂いが懐かしいと思った

味噌汁は大根と葱だけのシンプルな物、お味噌はおばあちゃんが特製で出しはイリコで取っていた。それに良く香奈が来ると何時も作ってくれていた玉ねぎと卵だけのオムツがあった。香奈は久しぶりに食べる温かい朝食を凄く美味しいと思うとまた涙がホロホロとこぼれた。

暫くして隣の常ちゃんの家からおばあちゃんが帰って来た。