荷物を全てトラックに積み込み直ぐに大阪の家を後にした。香奈は周りを見渡し両親も妹も誰の姿も無くて夕暮れの冷たい風が香奈を余計に寂しくさせた。香奈は余りの寂しさにトラックの助手席で俯いたまま何時迄もシクシクと泣いていた。そんな香奈の肩を真ん中の席に座るおばあちゃんは長年よく働いたシワシワな手で何時迄も優しくさすっていてくれた。香奈はそんなおばあちゃんの手に頼るしかなくなったのだ。

トラックはゴトゴトて揺れながら大阪を離れて行った。



おばあちゃんの家に着いたのが夜中の三時頃だった。

『荷物は明日にして早よ中に入りなさいや』

おばあちゃんは古い火鉢にガスコンロから十分に焼いた炭を沢山入れた。

『昔の人は皆こうして温まっとたんよ』

そう言ってから両手を火鉢にかざして摩りながら皺で縮んだ顔を更に縮ませてニッコリ笑う姿を見て、こんな何にも無い場所で1人で生きてるなんて自分には出来ない。バァちゃんは強い人だと香奈は思った。

暫くすると部屋の中がポカポカと暖かくなりようやく香奈は落ち着きを感じた。そうなると旅の疲れがどっと出て来て先程おばあちゃんが引いてくれた布団に潜り込んだ。布団の中にはアルミ製の湯たんぽが入っていたので冷えた身体は直ぐに温まった。香奈はもう何も考える事が出来ない位の睡魔で直ぐに寝落ちた。