それは桜の花がぐるりと彫られていプラチナの指輪だった。

『バアちゃんの大事な物なんやろ?おじいちゃんの形見やん』


香奈は目をクリクリさせて言うと、おばあちゃんはニコニコ笑いながらうんうんと何度も頷いた。

『はめてみや』

とおばあちゃんは香奈から指輪を取ると香奈の右手の薬指にはめた。凄く柔らかな感じで指に添いピッタリとしていて香奈は驚いた。


『この指にな、指輪はめると結果が出せるって本に書いてあったわ』

そう言っておばあちゃんは舌をぺろっと出して肩を縮め楽しそうに笑った。おばぁちゃんは占いが大好き。だから何時もそんな事をよく言っては香奈に笑われてしまう。


香奈はしげしげと指輪を眺めて『バアちゃん、桜可愛いなぁ』と言った。

『そうやろ?それなおじいさんが桜の花を書いてこしらえて貰ったんよ。香奈が迷ったあの桜の花はな今は咲かんなったけど昔はどの桜よりも1番先に咲いたんよ。この村はな南国やけんな2月の今頃なら芽が膨らみ始めてから香奈の誕生の日には何時も満開じゃった』

そうおばあちゃんは話すと火鉢の前に「うんしょ」と座り直した。

『あの桜の樹はな昔から言い伝えがあるんよ。お願い事やらは聞いてはくれんけんどな出会うと奇跡がその人に起こるんよ。バアはなそこでおじいさんと出会い嫁に貰うてもらい幸せに生きて来られたよ』


おばあちゃんはそう話すと照れながら小さく笑った。そして少し右上の空を見上げ何かを想う様に優しい顔になった。