香奈は桜の樹に居た男の子「コトダマ」が言っていた通りに前に前に歩いてすっかり暗くなった道を下った。明かりがチラホラ見えて来て香奈は本当にホットした。

『香奈ぁ!香奈ぁ』

おばあちゃんがヨタヨタっ香奈に向かって走って来るのが見えた。シワシワの顔をくちゃくちゃに歪めて何度も躓いてはやっとこ転ばずに走って来た。その姿を見た香奈は思いっきり顔を歪めて泣き出した。


隣の常ちゃんも、駐在さんも走ってくる。

『バアちゃん。ごめんなさい』

香奈は思いっきり小さな身体のおばあちゃんの胸に飛び込みオイオイと泣いた。おばあちゃんはそんな香奈の頭を優しくシワシワの痩せた手のひらで撫でながら片方の手で香奈の背中をぽんぽんと叩いた。

『カレーライス出来とるよ。バァの作る菜花の明太子サラダは美味しいよ。香奈はまだ食べた事無かったろ?早う家に帰ってカレーライスたべよぅな』

そう小さな子供をあやす様におばあちゃんは香奈に優しく話しかけた。心配掛けたのに怒りもせずだだ香奈に優しく話し掛けるおばあちゃんの声はまるで子守唄のように柔らかく気持ちが良かった。

昔、母の紀子が幼い香奈を寝かしつける時を思い出してまた香奈は泣き出した。