桜が咲く頃~初戀~

良幸は『夜中の2時に大阪を出ました』と言った。


『そんな早うに来なくても』とおばあちゃんが言うと良幸は

『彩未の学校もありますし。日曜日には帰っていないといけないので』


と車椅子から立ち上がると縁側に座り直した。彩未は良幸の傍から離れすに甘えた声を出して良幸にまとわりついている。

香奈はその姿を見て、自分はそうやって良幸に良幸に甘えた事が無かったと思うと泣きたくなるくらい胸が痛んだ。

12歳で会った父にこんな風に甘えらる訳も無かった事は分かっているものの。幸せそうな彩未と良幸を見るのが辛かった。その様子を香奈の目線で静かに見ていた紀子が

『香奈は一郎おじいちゃんにあんな風に甘えたりしていたんやで。何時もおじいちゃんにまとわりついて。そんか香奈をおじいちゃんは本当に嬉しそうに大切にしてくれてたよ。ごめんね。香奈』

そう言って紀子は香奈の肩を抱き寄せた。