『あっ、圭!こったこっち』

その声は楽しそうに弾んでいて良く通った。

『まぁ、香奈ちゃん。可愛ね〜。夏前に紀久代おばぁちゃんが街の呉服屋さん連れて行ってって言うから一緒に行って2人の反物選んだんよ〜2人ともよう似合ってるわぁ。圭の浴衣もおばぁちゃんが作ってくれたんよ』

と言いながら「たこ八」前で財布を左手に持ち満更でも無さげに笑った。

『あっ、たこ焼き買うて来いいわれててね。あなた達。食べたの?』

といわれて祭りの会場に来てから食べ物はは1つも口にしてない事に気がついた圭亮は


『いや、まだなんも』

と、モジモジしながら言うと百合子は目を丸くして『え?』と呟くと間を開けてから『アハハ』と大きな声で笑った。2人が緊張しているのが分かって面白くなったのだ。

2人は百合子にそう言われると今まで感じなかった空腹とたこ焼きの焼ける匂いとソースの香りがたまらなく胃の中と口の中を刺激した。


『すみません。さっきのたこ焼きと焼きそば10個づつ以外に追加で焼きそばとたこ焼きを2人前づつ2袋別にセットにして入れてもらえます?』

と言って汗だくになりながら白いタオルを頭に巻いてニコニコしながらたこ焼きを鉄板で器用に回すお兄さんに言った。


『はいよ。マヨネーズと青のりどないしまひょ?』

と返事をするお兄さんはコテコテの職人に見えてカッコイイと圭亮は思いながら

『マヨネーズも青のりも付けてください。香奈ちゃんもいいよね?』

と言うと香奈は

『青のり少なめでマヨネーズたっぷりでお願いします』


と呟いた。

それが聞こえたのが、お兄さんは


『姉さん。美味い食べ方しっとんねぇ。青のり少なめマヨだくで〜』


と大きな声で言うと竹の船にたこ焼きを乗せてから隣にいたお姉さんに渡すとお姉さんも器用にソースをかけたりした。

『姉さんにたこ焼き2個オマケつけといたからなぁ。食べれへん時は彼氏に上げてや〜』


と汗だくではあったけど綺麗にお化粧した顔はとても綺麗に笑った。