桜が咲く頃~初戀~

圭亮は香奈にポイを差し出すと左隣に座らせて金魚すくいを始めた。

香奈は圭亮に習って金魚を救ってみたけれどポイは一瞬で破れてしまった。

『香奈ちゃん、金魚すくいってやった事ない?』

と言った圭亮に香奈は横顔だけ見せて頷いた。


『こうやるんよ』

圭亮はそう言うと着ている浴衣の両袖をまくり肩に乗せて脇に挟んでズレない様にした。

まだ、高校生な圭亮の焼けた腕は筋肉質で艶がありその所作を見ていた香奈はドキドキとしてしまっていたけれどそれよりも圭亮がすくう金魚の数に驚いた。

圭亮は器用に金魚をポイが破れてからもすくっていたのだ。


金魚すくいも終わり、おじさんが2匹の赤い金魚と黒い出目金を1匹水と一緒に袋に入れて


『彼女に!』

と言って香奈に渡した。

香奈はそれを受け取ると立ち上がった圭亮につられて立ち上がってから圭亮を見た。

圭亮はおじさんに「彼女」と言われて、そっぽを向いてモジモジしているのが何だかまた香奈は面白いと思って少し笑った。


その時に打ち上げ花火の打ち上がる笛のような音がした。