そこに母の紀久代から電話がかかって来た。

『はい。お母さん。2人はどう?彩未は我儘言って無い?』

と紀子は病室でもあったのでスマホの口元を右手のひらでおおい小声で話した


『あぁ、彩未ちゃんはよう言う事聞いてな。いい子におるよ。で、良幸さんはどんなんね?』


受話器から聞こえる紀久代の声は心做しか心配そうだった。

『あ、あのね。ぎっくり腰なんだけど、太り過ぎてるでしょ?だから一応色々検査するって言って2、3日の入院で1週間したらぎっくり腰も良くなるって』

少し紀子は笑いそうになりながら言うと良幸は「もう言うな」と呟きながら恥ずかしそうにしていた。


『紀子。良幸さんと話しできるかね?』

そう紀久代が言うと紀子は良幸にそっとスマホを渡した。良幸は『なに?』と言いながらスマホを受け取ると。電話に出た


『良幸さん。大丈夫なんかね?』


紀久代が言うと良幸は


『お恥ずかしいです。あっ香奈がそちらにお世話になりながら、1度もご挨拶せず申し訳ありません』

と痛い腰をかばいながら何故か電話口で頭をペコペコと下げている

『あぁ。それはかまんのよ。良幸さん身体良くなったら1度コッチに来れんかね?』

紀久代がそう言うと良幸は頭をクシャクシャとかいて


『いやぁ。香奈が嫌がるでしょうし。僕も香奈に会うのが情けなくて・・・香奈が辛い思いをしたのは僕のせいでもありますし・・・』

そう、ボソボソと話す良幸の姿が可哀想になり紀子は良幸の肩を摩りながら泣きそうになった