桜が咲く頃~初戀~

おばあちゃんは来た時と同じにネコ車をよいしょと持ち上げると上手に方向を変えた。それを見た香奈は。

『バアちゃん香奈が押す』

そう言ってネコ車をおばあちゃんから受け取るとヨロヨロとバランスを崩して左手側に倒してしまった。

『大丈夫かよ?』


おばあちゃんはケラケラと笑いながら香奈に聞いた。香奈はそれでも必死にネコ車を持ち上げると来た道の下り坂をぐねぐねと押して歩き出した。時折ネコ車に引っ張られるかの様に小走りになる。

おばあちゃんは、そんな香奈の姿を見ながら凄く楽しそうに更に笑うと腰に両手を回して「どれ、かしてみ」と言ってから香奈からネコ車を受け取ると自慢気に押し出した。

『香奈、これはな免許がいるんやで免許もっちょるかな?』

そう言って悪戯に笑うおばあちゃんは本当に可愛かった。


『あはは、バアちゃん。持ってるわけ無いやん』

何だかおばあちゃんといると楽しいと香奈は思ったら嬉しくなった。


家に帰りお昼ご飯を鯵の開きと大根の漬物と味付け海苔でかるく済ませるとおばあちゃんは日課のミノモンタのテレビを観ている。香奈は今朝の畑に行った事で周りを少し散歩してみたくなった。おばあちゃんの背中に声を掛けたがテレビを観ながら船を漕いでいるみたいで返事が無かった。


すぐ帰るからとそのままにして1人外に出掛けた。さっきの畑からは海が見えていたのでもう一度見に行こうとおばあちゃんの畑までの道を登り出した。


朝、おばあちゃんと来た時には気がつかなかった野花などが春に近い風に揺れて可愛くお辞儀をしているかのように見えるのが何だか可笑しくて少し笑った。香奈には全ての風景が新鮮に思えていた。