『当時はな。河津桜は本当に珍しい桜やてな。日本中でもなかなか見つからない桜やった。1番に見つけたんは伊豆の河津って町や。そうなるとあの桜の樹が何の桜か誰も分からん。ただ早咲きの桜何じゃろとしか思わんかった。しかし、桜子がそれを握っとったと言う事はその時代からこの村には河津桜があったって事になる。それに2月やろ?今日みたいにもうすぐ3月に入るって頃に雪が降ると言う事はあの桜の樹にも雪が積もるって事や。そんな景色香奈は見た事あるか?』
そう言うとお味噌汁の火を止めて香奈が座るテーブルを挟んだ向かいに座り両手を組み直すと手の甲にシワシワで二重になった顎をチンと乗せた。
香奈はそんなおばぁちゃんの姿をじっと黙ったまんま見詰めた。
『バァはな。その景色を見た事ある。それはそれは本当に美しゅうてな。可愛いピンクの花に白いキラキラした雪が乗っかるんや。今、あの桜に花が咲いとったら良かったのになぁ?雪が溶けたら今度は花弁が散り出す。それが風に吹かれてまるでピンクの牡丹雪みたいで綺麗やで。そしてなあの小道にピンクの道が出来るんや。バァはあの姿がほんま大好きでな。してな。花弁が全部散ったら今度は綺麗な緑色の葉に変わる。お天気の良い日にはな、その緑がキラキラしとってな。青い空と白い筋雲にとってもに似合うとる。春が来たなぁと何時もそう思うとった』
香奈はそのおばぁちゃんが優しい可愛い声で話すその話をまるで昔話しかのように聞いて
『見たかったなぁ』
と呟くと残念そうに笑ってみせた
『そうやな。見たかったな。もう4.5年は咲いておらんなぁ。何か拗ねとるんかな?香奈だって不貞腐れれている気持ちの時は何ぁんもしたくなくなるやろ?』
そう言うとさっきまでの雰囲気を和ますように「あはは」と土間にある蛍光灯を見上げて笑った。
『圭君はええ子や』
と呟くとおばぁちゃんは座った椅子からまた立ち上がり炊飯器の蓋を開けた
そう言うとお味噌汁の火を止めて香奈が座るテーブルを挟んだ向かいに座り両手を組み直すと手の甲にシワシワで二重になった顎をチンと乗せた。
香奈はそんなおばぁちゃんの姿をじっと黙ったまんま見詰めた。
『バァはな。その景色を見た事ある。それはそれは本当に美しゅうてな。可愛いピンクの花に白いキラキラした雪が乗っかるんや。今、あの桜に花が咲いとったら良かったのになぁ?雪が溶けたら今度は花弁が散り出す。それが風に吹かれてまるでピンクの牡丹雪みたいで綺麗やで。そしてなあの小道にピンクの道が出来るんや。バァはあの姿がほんま大好きでな。してな。花弁が全部散ったら今度は綺麗な緑色の葉に変わる。お天気の良い日にはな、その緑がキラキラしとってな。青い空と白い筋雲にとってもに似合うとる。春が来たなぁと何時もそう思うとった』
香奈はそのおばぁちゃんが優しい可愛い声で話すその話をまるで昔話しかのように聞いて
『見たかったなぁ』
と呟くと残念そうに笑ってみせた
『そうやな。見たかったな。もう4.5年は咲いておらんなぁ。何か拗ねとるんかな?香奈だって不貞腐れれている気持ちの時は何ぁんもしたくなくなるやろ?』
そう言うとさっきまでの雰囲気を和ますように「あはは」と土間にある蛍光灯を見上げて笑った。
『圭君はええ子や』
と呟くとおばぁちゃんは座った椅子からまた立ち上がり炊飯器の蓋を開けた


