やはり、この日も彩未の独壇場と化した土間は賑やかだった。


朝食が終わると部屋の電話が鳴った。おばぁちゃんの家の電話は昔からのダイヤル式の古い電話だった。最近は全く目につかなくなっている。香奈が生まれてからはほとんどがプッシュ式の電話になっている為にダイヤル式の電話の番号を回すのは手間ではあるけれどダイヤルを回す時のコロコロと言う音が香奈は好きだった。


彩未はそんなおばぁちゃんの黒い電話が珍しいのか？電話が鳴と必ず走って重たい受話器を掴むのだ。


『はぁいっ。待っててください〜』

と言いながら左手で持ち上げられた黒電話の受話器を重たく彩未は右手のひらで支えながら口に持って行き、聞こえる耳の方は大き過ぎて耳には無くて頭についている。その姿が面白かったけれど何故か新しい物を手にするみたいに楽しげな彩未の顔はとてもキラキラしていて可愛かった。

それを香奈と紀子は見ながらお互いの顔を見合わせてクスクスと笑った。優しい空気があんなに分かり合えないと思っていた2人の間に流れた。


『うん。はい。うん。はい』

それを繰り返す彩未の後ろに紀子は近づくとそっと手を出した。

『ちょっと待っててください。私、小学生なんでお母さんに変わります』


そう言うと彩未は紀子に受話器を渡した。