『綾香、結婚しとった。可愛い男の子も、産んでた。強い女だったけど。益々強くなってて綺麗になっとった』

圭亮はそう言うと香奈を見て何故か頷いた。


香菜はそれが、どう言う意味なのかはよく分からなかったけれど香奈の胸の内を覗いているみたいに。


『綾香は幼馴染で俺には情しかずっと生まれて来んかった。それが綾香を傷付けたんやと思う』


そう話の出だしを探る様に圭亮は白々と綺麗に光る月を見上げて膝に乗せている両手を合わせギュッと握った。まるで緊張を抑えるみたいに。

そんな、圭亮の少しの沈黙に心無しか焦った香奈は


『そうなんや。圭亮君は後悔とかしてへんの?』


と聞いて圭亮が見ている方にある月を見詰めた。圭亮を直視してはいけない気持ちもあったからだ。

『ん?後悔?しとるよ』

そう呟くと香奈の横顔を見て更に話しはじめた。


『綾香の気持ちを知っていて。悪く言えば…俺の淋しと思う隙間を埋めさせて。綾香の寂しさをどんどん広げて行った自分に後悔しとる』


香菜はその言葉で少し分かりそうな気持ちのリンクの先に父、良幸を見た。

胸が痛くなって沈みそうだった。


『そっかぁ』

それだけ言うと後の言葉を見つけられない。


『うん』

圭亮はそう言って頷いた。