桜が咲く頃~初戀~

少し田圃を挟んだ畦道を歩くと綾香はピタリと足を止めて敬涼を抱き直した眠りについている敬涼は重くなり綾香はちょっと力を入れ直してから静かに圭亮に向き合うと言った。

『圭、ごめん。私、圭が香奈をずっと好きやったのは知っとった。圭ってそこん所は鈍感で頼んないから。だから香奈には圭を渡したく無かったんよ。圭と暮らしていたに圭は心ここに在らずでちっとも私を好きになってくれんやったし。写真踏んで悪かった。今、私も大切な家族が出来て、そんなんされたら、そりゃ怒るね。私もぶっ飛ばすし。後悔してる』


そう行った。圭亮は今更そんな綾香を怒る気持ちにもなれず


『綾香。俺もごめん。優柔不断でナヨナヨしとった。綾香、結婚出産おめでとう。幸せになりなよ』


と綾香を見下ろしながら綾香の抱いている敬涼の頭を撫でた。


『そんくらい分かっとる。圭もしゃんとしんないかんよ。本当に気がついて欲しかった。何かよく言うけど1番好きな人とは一緒になれんらしいね』

そう言うと綾香はここまでと手で圭亮を止めた後、抱いている敬涼をゆっくり揺らしながら杉本家に帰って行った。