夕食の献立は何時もおばあちゃんの畑で育った野菜が中心のシンプルな物。今日は昼間に移動の魚屋さんが来たのでおばあちゃんは鰤の粗を買っておばあちゃんが作った大根でブリ大根になった。後はカブの酢漬け、菜の花のお浸しに豆腐の柚味噌田楽。

どれも本当に美味しかった。一番贅沢をしているかの様な気持ちに香奈はなっていた。

おばあちゃんの従兄弟の太一郎おじさんが作るお米も本当に美味しいので最近はお代わりをする程食欲も出て来た香奈が大阪にいた頃の痩せてギスギスした身体は少しづつ丸みを見せて来ていた。

隣の座敷にある古いテレビから可愛らしい女子アナウンサーが明日のお天気を話している。

おばあちゃんはそれを椅子の背もたれに箸を持った右肘を乗せて少し腰をひねらせ観ていた。

『バアちゃん。明日から何か手伝う』

香奈はぼそりと呟いた。その言葉を暫く理解するのに時間をかけて受け入れたおばあちゃんは。

『そうか、明日は晴れじゃと。畑に行ってみるか？』

そう言って食べ終えた皿を重ねて流しに持って行き洗い出したおばあちゃんの背中は肩が少し上下に揺れている様に見えなんだか泣いているみたいだった。