先生の後ろに付いて廊下を歩く。
昨日もこんなに暑かったけ?
妙な緊張感が身体を包んできた。

廊下はあっちこっち固まって話してる生徒でザワザワしていた。
先生と挨拶をする生徒たちは一度も二度も振り返ってみる。
「転校生?」
「可愛い!芸能人なの?」
「え?マジ?誰?」
騒いでる声が廊下に響きだした。
1年3組
ガラガラガラッ
先生は教室のドアを開けた。
「おはよう。みんな、席について!」
先生の声でみんなはサッサと自分の席に戻った。
教室の中もすぐざわめきが広がった。
「えと、今日は新しい友達が転校してきました。
期末テストも控えてるけど、色々と教えてあげて、仲良くしてね。はい自己紹介して」
「はじめまして。流川椎です。よろしくお願いします。」
「席はあそこの空いてる席に。知らないことは委員長の平岡君に聞いてください。」
先生は教室を出て、椎は空いてる席に向かった。
「よろしく。流川さん」
「よろしくお願いします。」
席までの間、みんなが優しく声をかけてくれた。
クラスの中にはテレビでよく見かけた女の子もいた。
パネル越しの派手な姿ではなかったけどやっぱり目立つ美人。
席に座ったらすぐ人たちが集まってきた。
急な転校だったので、まだ元の学校の征服でみんな色々と聞いてきた。



広い体育館
ジャージの用意が出来てない椎はギャラリー席で見学をしていた。
ポケットからブルブルとケータイが震えた。
あけて見ると
直兄ちゃんからのメールだった
<寂しいよ、椎。そっちはどう?
今日は初日だから迎えに行くね。>
<体育時間で、見学中。
一人で帰れるよ。ここもなんだか前と変わらない感じ。待ち伏せてるファンの子もいるし。>
返事をした。すぐブルブルと返事が届いた。
<俺のファンじゃないから大丈夫。笑
今日はタッ君抜きで、一人で行くから。何時に終わる?>
タッ君は工のことだ。
直はなおにーって呼ばれている。
<今日は・・>
「ケータイ見えたら没収だよ。」
いつの間にか隣に綺麗な男の子が座って声をかけてきた。
「あ、はい」
椎はケータイをポケットに閉まった。
「色々禁止なんだ。ケータイやアイポッドとかも。帰りにコンビに立ち寄りも禁止だかんね。
厳しいのここ。その征服は赤山?」
「あ、はい。征服ショップの事情で、ちょっと」
「そっか。俺、伊崎いざき玲れ苑おんよろしく。」
「あ、こちらこそ。流川椎です。」
「ため口でいいよ。」
流川か・・ってつぶやいた伊崎はじろじろと椎の顔を覗き込んだ。
「あ!!思い出した!」
椎はわけが分からずに首をかしげた。
伊崎は椎の席に近づいてきて小さい声でつぶやいた。
「君、不倫してるんでしょう?」
「え??」
 「結構年上のカッコいい彼氏いるんでしょう?」
 「結構って?」
 「20くらい?」
「いないよ」
さっぱりと返事する椎
「俺、記憶力抜群で、こんな美人は一度見たら忘れないけど?」
「それっていつもの台詞?」
「違う。俺ナンパなんて出来ないし」
「何が聞きたい?」
「放送局に来てたでしょう?Jーテレビの」
「ああ、、行ったかも」
「ほら。じゃあ、もしかして不倫じゃなくて人妻だったり?」
「あたし、15歳。結婚できる歳じゃないよ」
伊崎がコソコソと話してるせいで椎の小さい声で答えた。
「そんときに、イケメンの俳優さんとべったりしてたじゃん」
「あ、うちのパパ」
「あ、パパか、流川さんがパパってことね・・え?!」
伊崎は目を見開いた。
「流川椎です。」
椎はとびきりの笑顔を見せて答えた。
思わず顔を赤く染める伊崎
「な、なに。急に笑うなよ」
「あ、ごめん」
「別に謝ることはないけど、それって内緒?」
「何が?」
「パパのこと」
「ううん。隠してるわけじゃないけど、敢て言う必要もないから。
言われたら否定はしないよ。友達には」
「友達には?」
「うん。マスコミ絡みの人には勝手にインタビュー受けさせないからノーコメント」
「あ、そういうことね。じゃあ俺は友達ってこと?」
「まぁ、クラスメイトだから。うちのクラスだよね?」
「椎が俺のクラス」
その後、伊崎はいきなり呼び捨てって馴れ馴れしすぎだよねって謝ってた。
体育授業を受けてるみんなが何回がこっちを見てた気がした。
「あ、俺、三日ぶりだから先生に挨拶しなきゃ」
「どうぞ」
伊崎君は爽やかな笑顔でみんながいるところへ歩き出した。


放課後、校門の近くには直が待っていた。
なんだかパチパチと写真撮られてるみたいで、でもそんなことはまったく気にせず
下校時間より少し遅めで
一人違う征服で少しは疲れた顔で歩いてくる椎に手を振った。
「椎!」
「なおにー、お待たせ。」
椎も笑顔で、直に手を振ってみせた。
「お迎えに上がりました。」
「どうも」
仲良く話ししながら歩いてると
「学校周辺は恋愛禁止だよ。」
その声で振り返ってみると伊崎がニッコリしていた。
隣にはなんだか雰囲気の似ている美少年軍団がいて、女の子たちが後ろについていた。
「わざわざありがとう。」
椎は親切に教えに来てくれた伊崎に礼を言った。
「親切ですね。美少年」
少し大きめな声で呟いた直。その声が同然伊崎にも聞こえてて
でもなんだか素直に褒める言葉には聞こえなくて
一瞬、伊崎の足が止まったような気がした。
「でも俺らまだ同じ制服だから仲良く歩いててもこっちの先生に注意されることないと思うけど?」

確かに、他校の二人にしか見えないかも
なんだ。俺
つい声をかけちゃったりして、どうかしてる

伊崎は小さく会釈をした。すると直は
「あ、美少年」
って伊崎を呼び止めて彼の元に近づいて行った。
「なおにー」
少し心配そうな椎を後ろにして直はとても素敵な笑顔を見せて
伊崎の耳元に、誰にも聞こえないような小さい声で呟いた。
「いいか?これからは、ファンの前で椎に馴れ馴れしく声掛けるな」
その声は、素敵な笑顔とは裏腹でとても涼しくて、すみませんと答えてしまった。
「じゃあ、またね。クラスメートさん。椎帰ろうぜ」
すっきりした顔でまた元気よく椎に手を振る直
伊崎に何を言ったかは分からないけど直の行動に驚いてるはずの彼に「ごめんね」と口パクで謝った。
そして伊崎はまた仲良く歩いて帰る椎と直の後ろをしばらく歩いてた。