授業中にケータイがブルブルと震えた。
受信ランプが光ってて
<話がある。授業終わったら
あそこで待ってるから。
シカト無しな。>
カイからメールが届いてた。
椎は授業が終わってすぐ教室を出るカイをみて
少しの時間差をおいて出た。
カイが行った反対方向に回って非常階段をのぼった。
この階段をのぼっていくと屋上につながるんだけど
本館校舎の広い屋上ではない
本館校舎屋上にある倉庫建物に隠されて人の目が届かない場所で
大きい水タンクなどが幾つか置いてある。
ドアにはしっかり「立ち入り禁止」と書いてある。
久々にくるけど
中1の時にはたまにここで風に当たっていたり
昼寝をしてたり
まだ楽しくカイと笑い会えたりしてた
数少ないけど
ドアは閉まってるように見えるけど開いていて
お兄ちゃんたちが教えてくれた場所
「息苦しくなったらここで休憩な。
ここ風が気持ちいいんだ。」
って。
お兄ちゃんたちはサボりに来てたけど。
ドアを開けたら冷たい冬の風が吹いて
フェンスに寄り掛かってるカイの姿がみえた。
少し長めの黒い髪が冷たい風にサラサラ靡いてた。
椎はカイがいるところに向けて歩いて行った。
「遅っせーよ。」
短い言葉を零して
椎の腕を引っ張り自分の肩の中に閉じ込めた。
「なっ、なによ・・離してよ」
慌ててカイの腕の中から抜け出そうとすればするほど
抱き締める力は強まった。
「離さない」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
誰の音なのかわからない。
「こうしてるのが暖かいから」
カイが優しい声でつぶやく。
「別にここじゃなくても・・・」
「お前、また逃げるから。学校終わってからは時間無いし
外ではシカトするし、一緒に帰れないから」
椎は何も言えずに黙った。
「椎」
低いけど優しい声
椎は顔を上げてカイをみた。
目と目が合う。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
「ちゃんと・・聴くから離して。誰かに見られたら」
「誰も来ない」
カイはもっと力を込めた。
「俺さ、映芸高校に行くことになった。事務所からメンバー全員映芸に入学するって言われたの」
腕の中、椎の肩が少しビクッとした。
「これから活動も増えるだろうし、それでイイんじゃない?」
椎の声は少し震える。そして強く抱き締めていた腕の力が緩まった。
「椎はやっぱ、兄ちゃんたちの学校に行く気?」
「そうするつもり」
「な、俺と同じ学校に行かない?」
少し黙った椎は
「あたしは芸能人でもないし、その学校スパルタ式で有名じゃん。
それにお兄ちゃんたちも今年で受験生になるからイチイチかまってくることもないと思う」
「それはどうかね、シスコン双子なんだから」
椎はカイを睨みつけ、両手で思いっきりカイの肩を押し付けた。
「そんな風に言わないでよ。兄ちゃんたち居ると心強いから。
兄弟仲良くしてて何が悪いの?」
「悪くねーけど仲良さすぎだろう」
誰も椎に近づけないもんね。
それはそれで感謝するけど
ガード固いから。攻める余裕ねぇし
俺も含めて
椎の顔近くに、深く顔を伏せたカイはしばらく椎の瞳を見つめて
「俺はダメか?」
と聞いた。
「な、なに」
と慌てて椎が目を逸らすとカイは背筋を伸ばした。
カイ、大きくなってる
冬休みの間
また背伸びたんだね。
成長期の男の子ってすごい。
「椎、俺はダメなの?」
また同じ質問。
返事しなきゃ
「ありえないでしょう。昔からカイ守ったのってあたしだもん」
「昔の話すんな!そんなのいちいち覚えてねぇよ」
イラついてるのか、恥ずかしがってるのか白い吐息を漏らしながら言った。
まとまらない話をしてる間に休み時間が終わるチャイムが鳴った。
「あたし、そろそろ行かないと」
椎が右腕にはめてある時計を確認した。
「さっきの!」
と叫んだカイは手を伸ばして椎の征服のポケットに手を突っ込んで
紙切れを取り出した。
あ、山本さんからもらった誰かさんの連絡先
「こんなくだらないのもらうな」
「別にいいでしょう」
キレそうな顔をしてカイがその紙切れをびりびりと千切って空中に飛ばした。
なによ。
自分はいつも色々ともらってるくせいに。
別にもらったって連絡しないし!
「カイ、背伸びた?」
教室に戻る屋上のドアの前に足を運んだ椎が後ろも振り向かずに聞いた。
「ああ」
俺、めちゃ頑張ったからね。
お前に会えなかった冬休みの間
毎日、毎日頑張った。
「いくつ?」
「178」
カイには見えなかったけど
椎は少し寂しそうな目をして微笑んていた。
もう13センチも差が開いた。
また遠くなるね。
「もう、ここで会うことなんてないから」
「椎」
俺のこと見てくれない。
背中向けるな!
「カイ」
椎、振り向いてくれ
「アイドル頑張って!いつも応援する。」
ドカン!
ドアが閉まる音はいつもより大きく響いてて
胸が疼いた。
「なにそれ・・・」
大きなダメ息が零れてきた。
ハァーーーー。
ちくしょ。
いつの間にか俺の前では笑顔を見せてくれなくなった。
いつの間にか俺はダメ息ばっかつくようになって
楽しく話し合えたのっていつだったかも覚えてない
小さいころからずっと一緒だったのに
こういうふうに二人きりになるのもちょっとだけの時間で
そのやっと手に入れた時間に息をするのも俺には背いっぱい
ズキン!ズキン!
椎、胸が疼くよ。
俺の手は
今のお前には届かないみたい。
受信ランプが光ってて
<話がある。授業終わったら
あそこで待ってるから。
シカト無しな。>
カイからメールが届いてた。
椎は授業が終わってすぐ教室を出るカイをみて
少しの時間差をおいて出た。
カイが行った反対方向に回って非常階段をのぼった。
この階段をのぼっていくと屋上につながるんだけど
本館校舎の広い屋上ではない
本館校舎屋上にある倉庫建物に隠されて人の目が届かない場所で
大きい水タンクなどが幾つか置いてある。
ドアにはしっかり「立ち入り禁止」と書いてある。
久々にくるけど
中1の時にはたまにここで風に当たっていたり
昼寝をしてたり
まだ楽しくカイと笑い会えたりしてた
数少ないけど
ドアは閉まってるように見えるけど開いていて
お兄ちゃんたちが教えてくれた場所
「息苦しくなったらここで休憩な。
ここ風が気持ちいいんだ。」
って。
お兄ちゃんたちはサボりに来てたけど。
ドアを開けたら冷たい冬の風が吹いて
フェンスに寄り掛かってるカイの姿がみえた。
少し長めの黒い髪が冷たい風にサラサラ靡いてた。
椎はカイがいるところに向けて歩いて行った。
「遅っせーよ。」
短い言葉を零して
椎の腕を引っ張り自分の肩の中に閉じ込めた。
「なっ、なによ・・離してよ」
慌ててカイの腕の中から抜け出そうとすればするほど
抱き締める力は強まった。
「離さない」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
誰の音なのかわからない。
「こうしてるのが暖かいから」
カイが優しい声でつぶやく。
「別にここじゃなくても・・・」
「お前、また逃げるから。学校終わってからは時間無いし
外ではシカトするし、一緒に帰れないから」
椎は何も言えずに黙った。
「椎」
低いけど優しい声
椎は顔を上げてカイをみた。
目と目が合う。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
「ちゃんと・・聴くから離して。誰かに見られたら」
「誰も来ない」
カイはもっと力を込めた。
「俺さ、映芸高校に行くことになった。事務所からメンバー全員映芸に入学するって言われたの」
腕の中、椎の肩が少しビクッとした。
「これから活動も増えるだろうし、それでイイんじゃない?」
椎の声は少し震える。そして強く抱き締めていた腕の力が緩まった。
「椎はやっぱ、兄ちゃんたちの学校に行く気?」
「そうするつもり」
「な、俺と同じ学校に行かない?」
少し黙った椎は
「あたしは芸能人でもないし、その学校スパルタ式で有名じゃん。
それにお兄ちゃんたちも今年で受験生になるからイチイチかまってくることもないと思う」
「それはどうかね、シスコン双子なんだから」
椎はカイを睨みつけ、両手で思いっきりカイの肩を押し付けた。
「そんな風に言わないでよ。兄ちゃんたち居ると心強いから。
兄弟仲良くしてて何が悪いの?」
「悪くねーけど仲良さすぎだろう」
誰も椎に近づけないもんね。
それはそれで感謝するけど
ガード固いから。攻める余裕ねぇし
俺も含めて
椎の顔近くに、深く顔を伏せたカイはしばらく椎の瞳を見つめて
「俺はダメか?」
と聞いた。
「な、なに」
と慌てて椎が目を逸らすとカイは背筋を伸ばした。
カイ、大きくなってる
冬休みの間
また背伸びたんだね。
成長期の男の子ってすごい。
「椎、俺はダメなの?」
また同じ質問。
返事しなきゃ
「ありえないでしょう。昔からカイ守ったのってあたしだもん」
「昔の話すんな!そんなのいちいち覚えてねぇよ」
イラついてるのか、恥ずかしがってるのか白い吐息を漏らしながら言った。
まとまらない話をしてる間に休み時間が終わるチャイムが鳴った。
「あたし、そろそろ行かないと」
椎が右腕にはめてある時計を確認した。
「さっきの!」
と叫んだカイは手を伸ばして椎の征服のポケットに手を突っ込んで
紙切れを取り出した。
あ、山本さんからもらった誰かさんの連絡先
「こんなくだらないのもらうな」
「別にいいでしょう」
キレそうな顔をしてカイがその紙切れをびりびりと千切って空中に飛ばした。
なによ。
自分はいつも色々ともらってるくせいに。
別にもらったって連絡しないし!
「カイ、背伸びた?」
教室に戻る屋上のドアの前に足を運んだ椎が後ろも振り向かずに聞いた。
「ああ」
俺、めちゃ頑張ったからね。
お前に会えなかった冬休みの間
毎日、毎日頑張った。
「いくつ?」
「178」
カイには見えなかったけど
椎は少し寂しそうな目をして微笑んていた。
もう13センチも差が開いた。
また遠くなるね。
「もう、ここで会うことなんてないから」
「椎」
俺のこと見てくれない。
背中向けるな!
「カイ」
椎、振り向いてくれ
「アイドル頑張って!いつも応援する。」
ドカン!
ドアが閉まる音はいつもより大きく響いてて
胸が疼いた。
「なにそれ・・・」
大きなダメ息が零れてきた。
ハァーーーー。
ちくしょ。
いつの間にか俺の前では笑顔を見せてくれなくなった。
いつの間にか俺はダメ息ばっかつくようになって
楽しく話し合えたのっていつだったかも覚えてない
小さいころからずっと一緒だったのに
こういうふうに二人きりになるのもちょっとだけの時間で
そのやっと手に入れた時間に息をするのも俺には背いっぱい
ズキン!ズキン!
椎、胸が疼くよ。
俺の手は
今のお前には届かないみたい。
