冬休みが明けた。
3年5組
教室の周りにキャーキャーしてる女の子がいっぱい

みんな、朝から元気いいね

すごい情熱とか思うけどこれもまた慣れてる
「あ、流川さんだ。可愛い」
「まさか、小宮先輩と付き合ってるワケじゃないよね」
「一緒に居るの見たことないよ」
「絵になるけど、いやだな」
「みんなのものだもん!」
ボソボソ話してるの聞こえてるし、よく妬ましい目で見られたりする。
「おはよう、奈菜なな」
「椎。おはよー」
きゃぁーーーー!!
教室に入ってすぐ廊下で黄色い声が上がった。
「王子様のお出ましですね。何かみんなの勢いって増してない?」
「もうすぐ卒業だから?」
「なるほど~王子様に会える日ってあんまないんだよね」
「静かに勉強できそう」
「思ってもないことを」
あたしは何でもわかるよみたいな顔で奈菜はニッコリと笑った。
「思ってるよぉ」
カラカラーーーー
教室のドアを開けて両手いっぱいプレゼントをもらってくるカイ
「おはよう、小宮くん」
「おはよう」
「小宮くん、昨日テレビみたよ~すごくよかった!」
「ああ。」
今度はクラスのみんなから歓迎される。

これがいつもの風景
小宮カイはあたしの幼馴染でうちのとなりに住んでる。
幼稚園のころからずっと一緒で
二つ上の双子のお兄ちゃんとカイの姉、5人でよく遊んでた。
カイの姉の椿つばきちゃんが履歴書を送ったのがきっかけで小6でオーディション合格
日本最大のアイドル養成所と呼ばれるトップエンタテインメントのレッスン生になった。
お兄ちゃんたちがこの中学に来たからなんか自動的にあたしも。
カイもなんとなく一緒で
外務官になりたいと言った椿ちゃんは強い意地でアメリカ留学。

事務所に合格してからすぐファンクラブが出来たり、
学校の前に待ち伏せしてる子も時間が経つにつれ増えていた。
最初は想像もつかなかった人気に、しかもまだデビューしたわけでもないのに
休みの時間に見にくる人とか学校帰りにもらうプレゼントで驚いてたカイも
今はそれが普通でもうすっかりアイドルって感じ。

まぁ考えてみればお兄ちゃんたちのアイドル並み超えてたな~。
どっかに縛られたりするのが嫌いな自由人だから事務所とかには入ってない。
入る気もないかも知れないけど
しばしば街中で名詞とかもらってくる。

うちには素敵なイケメンが3人も居て、
普通を超えないとカッコいいとは思えない状況かも。
てかあんなの毎日みるからあれが普通に思えたりもする。

しかし
幼馴染が人気ものになってくのを見るのと
うちにいる人気物を見るのってなんだか少し違うと感じた。


「流川さん、これ・・」
「うん?何?」
椎の隣に座る山本は小さい声で言いながら折り畳んである紙切れを出した。
「あ、あ朝、こ、校門の前で頼まれたんです。」
紙切れの中には名前とケータイ番号などが書いてあった。
「山本さん、わざわざありがとう。」
椎は優しい笑顔で答えて、山本の顔は赤くそまった。
照れながら席に戻った山本。
「今度は誰なんですか?」
「さぁ」
「椎の家ってさ、モテモテ血とか流れてるんじゃないの?」
「なにそれ」
「分けてちょうだいよぉ~」
「バカ~。よく言うよ。そっちこそ。冬休みの間に彼氏は何人変わっ・・」
席で奈菜と話をしてると机の上に人影がさした。
椎が顔を見上げるとそのにはカイがいた。
「あのさ」
不機嫌な顔
「なに」
椎は紙切れをポケットの中に突っ込んだ。
みんなの視線がここに集まる。
「ちょっ、やっぱりいいや」

なに、それ
わざわざ席にまで来てやっぱりいいやって

窓側の席に戻るカイをみて
「小宮くんってわかりやすい」
と言って奈菜はニッて笑ってみせた。