うちら、恋愛出来る?!


うわっー今日も相変わらず人が多くて

テストの最終日なのに

もうここで力全部使って試験頑張る気力がどんどんなくなる・・・。

18歳になったら真っ先に運転免許取ってやる!か

その前に引越しかな・・・


色々考えてたら

また目の前に大きな手が現れた。

ここ5日間ずっとあたしの後ろ・・・

なのに1回も顔を見れることは出来なかった。

彼の手が現れると押され感が少なくなる。

妄想かも知れないけど・・・

ひょっとしたら壁になってくれてるの?


「きゃあーっ!」

ぐいっと引っ張られた。

下車する人の群れに流され掛けたあたしの腕を・・

今は

いつも後頭部と当たってた胸板が・・椎の目と向き合ってる。

顔も知らない人の胸の中でぎゅっと抱きしめられている。

また不思議なシチュエーション。

助けてくれたに違いないから

思いっきり押し離すのもちょっと・・・だめな気がした。

椎は彼と距離を置くために右の手をそっと

自分と彼の胸板の間に入れた。

次の駅で彼は降りるから・・・

あとちょっとだけだ・・・


ここまで知らない人に気を許したのはなぜ・・・かな?

押し離すことは出来なくても背は向けれる?

いや~なんか動きづらいな・・この姿勢。

これで痴漢されても訴えることもできない。


この静かな出勤電車の中で鼓動が聴こえてくるような気がした。

うっそ!

まさかあたしじゃないよね?

助けられてただけで今の姿勢は仕方ない状況によるもので

こないだからなんか故障してるかも知れない

馬鹿なあたしの心臓が勘違いしてるのかな!

違うって!!落ち着いてよ!


ドクン・ドクン・ドクン・ドクン・ドクン

椎の手の甲に伝わってくるのは彼の鼓動だった・・・


ええええ??
なにこの人!!!!??

自分が助けて、なにドキドキしてんのよ!?

それとも心臓に病気でも?息苦しいとか?

「あの・・」
ちょっとだけ顔をあげて彼に声を掛けたら
もっときゅっって抱きしめられた。

「シッ・・・・」

あ・・・・!!!!!
手の平と甲にはバクバクと・・・
誰の鼓動か分からなくなってる音の動きが・・・

この匂い・・・は・・・



カイ・・・だ。