うちら、恋愛出来る?!


「「椎。

最近、女子高生を狙ってる痴漢がよく出没してるみたいだから気を付けるんだよ!

変な奴が近づいてくると警戒して

なんかされたら勇気出して大きな声を出す!分かった?

でもやっぱり心配だからしばらくはお兄さんが一緒に行く!!」」


って言い張ってるのをやっと落ち着かせて

今日も満員電車。

やったらなおにーの言葉が気になったりするから

怪しくない人まで怪しく見える。

だめだ。

考えすぎ!

何かあったら大きな声出して助けを求めるんだよね!

てか
これじゃ痴漢かただ押されてるのかよくわからない!

椎は次の駅で降りる人たちの流れに乗って

側引き戸のはじっこに立った。

人が降りたせいなのか

さっきよりはぎゅうぎゅうから少し楽になった気がする。

側引き戸左側の壁と向き合って

ぼっとしてたら目の前に大きな手が現れた。


うわーっ!びっくりした・・・

そっか・・


つり革もいっぱいで掴めるとこないんだよね。

この壁だって公共施設だし。


ちょっと近すぎだけど・・。

まさかこの人がその痴漢じゃないよね?!!

どこも触られてないし・・・

降りる時に顔見ようーと


電車がひどく揺れる度に椎の頭と後ろ男の胸板が当たる。

「すみません・・」

椎は小さく会釈をした。

後ろの人はきっと

背が大きい人なんだね。

手もこんなに大きいし。


あと2駅・・・

あたしと同じ駅なのかな?

側引き戸のガラスで顔を確認しようと思ったがマスクもしてるし

なんか前髪が長くて目が見えないよ!

毎日同じ電車に乗るとほとんど約束したように同じ人たちと
同じ車両で会う。

両手いっぱいの荷物を持ったサラリーマン
学生たち
その他の人々
朝早くからまた今日と言う日を始めてる人たちだ。

いつも座ってる人もほぼ同じで
立ってる人もほぼおなじである気がする。

あたしはいつも座れない人・・・涙。

うーむ。
この人は降りる人の流れに流されてきたのかな

とにかくこの大きい人に対する記憶はないけど

まぁ記憶しておけばいざっとなったときに手掛かりになるかも!

でもどうやって振り向いて顔や服装を確認するんだ。

怪しい目で見られて逆切れされたら怖い!

タイミング!タイミング!

同じ駅かあたしより後の駅なら確認出来るチャンスはある!

そんなこと思っててたら後ろの彼は次の駅で降りてしまった。

下車する大勢の流れと一緒に

あっという間に椎の視野からいなくなった。


ちょっと自分が馬鹿みたいでくすって笑っては

南央にメールを送った。

<なおにーのせいで健全な人を痴漢扱いするとこだったよ!もう~!
まさかなおにーじゃないよね?>

南央からの返事はすご返ってきた。

<そんなイケメンがいたのならそれは・・・
工だ。笑>