佐恵子さんがお家を出て一人になった椎は2階の階段を上った。
静かなノックをしてからカイの部屋のドアを開けた。
「お邪魔しまーす。」
キレイに片付けられているカイの部屋。
部屋中にはほんやりシトラス系のムスキーな香り。
爽やかだけどなんか甘い感じもするし・・・
「なんか・・・ちょっとセクシーな香り・・・。」
そんなこと言ってたら
壁に貼ってあるポスターのキスリップのメンバーやソロのカイと目が合ってしまって
恥ずかしくなった。
部屋の匂いに酔い掛け寸前に顔を横に振った椎はポケットからケータイを出した。
実は昨日のメールに対してカイからの返事はなかった。
家でずっと待ってても勉強に集中できそうになかったので
あれこれ考えるのをやめてたら
向こうが来なかったらこっちから行けばいいじゃんっていう
シンプルな答えに辿り着いた。
窓側の赤いフェブリクのソファーに座ってカイの部屋を見渡したら
なんとなくここに来て良かったと思えてきた。
さっきの佐恵子さんとのちょっとした会話も
今ここ、カイの部屋にいるのも・・・
赤いフェブリクソファーの前には四角で黒いツヤなしのテーブルがおいてあった。
ソファーより高めのテーブルにはたくさんのファンレター置いてあて
「カイ・・・ちゃんと読んでくれてるんだ・・・」
