―――― 空きなし ――――




朝一から、会議議事録を依頼された私は、櫂君へ朝の挨拶もそこそこに会議室に閉じ込められていた。

ああ、眠い。
ああ、ダルイ。
ああ、つまらない。

次々に交わされる言葉を記録しながらも、頭の中はぼんやりしてしまう。
カタカタとスピーディーに動く指と、ぼぼぼぼぅっとしている頭は別の生き物のようだ。

なんて生産性のない会議なんだろう。
さっきから同じことをグルグルと繰り返して、打開策の“だ”の字も出てこない。

よっ、給料泥棒!

声に出していいたいところだけれど、お前がな。と言われそうなので黙っておく。

あーあ、もうすぐお昼じゃない。

PC画面の隅にある時刻を見て、気づかれないように溜息を零した。

こんなの、時間のロスだよ。
もっとチャッチャと仕切れる人はいないのかね。

うなり声と、煙草の煙。
それとコーヒーばりが無闇に消費されていく。

社長はこの議事録に、ちゃんと目を通しているのかな。
こんなの記録しているだけなら、なおさら無駄なことだと思うんだけど。


そんな会議も、ようやく終了。
というか、ランチタイムを切りに次回へ持ち越しとなった。

これ、お昼休憩がなかったら、いつまで続いてたんだろう。
想像したら恐ろしくなった。

ああ、もう。
服が煙草臭いよ。
この辺の壁を拭いたら、あっという間に雑巾が黄ばみそう。

ヤダヤダ。と首を竦める。

社員たちがぞろぞろと気だるげに会議室を出て行ったのを見計らい、うっと大きく伸びをする。

「ぐは~っ」

伸びて吸った息を力なく吐き出すと、櫂君が開いたままの会議室のドアからヒョコッと顔を覗かせた。

「ランチ行きませんか?」
「おごり?」
「後輩に集らないでください」

目を輝かせて訊いたのに、ピシャリと断られた。

残念。