由美はバスが走り去ったほうをしばらく立ち止まって見つめてしまう。
気のせいではない。
確かにあの男の人はこちらを見ていた。
(あんなに目を合わせて、ちゃんと見るの初めてだ……)
頬に熱が集まるのを感じながら口元が緩むのを抑えられない。
いつも本や窓を見つめる、その人を見つめていた由美は、まともに目を合わせ正面から顔を合わせるのは初めてだったのだ。
(でもあの人…なにか言いたそうだったけど…なんでこっち見てたんだろう……)
思わず微かに首を傾げながら考える。
「……なんでかはわからないけど、嬉しい!!」
そんな独り言が出てしまうほど由美は喜びを隠せずにいた。
すると後ろから自転車のブレーキ音と共に、突然聞きなれた声が聞こえてきた。
「なーにがそんなに嬉しいのかなー??」


