いつも通りのその席に座れた由美は、ほっと息をつく。



(今日も隣の席に座れた…!)


思わず口元が緩んでしまう。


いつもこの時間のバスに、後ろから二列目の歩道側の席に座っているこの男性。

すらりと高い背は180近くだろうか。
黒髪で少し短めの髪を整えた髪型とスーツ姿は、誠実そうで真面目な印象だ。

年は20代半ばだろうか。
幼い顔立ちの男性はクールというよりも可愛い系の顔つきだ。



時間にはルーズで、遅刻の常習犯である由美が少し早めのこのバスに乗る理由は、この男性だった。


何度かバスで見かけ、かっこいい人だなと見てるうちに、気がつけば思いを寄せていた。



(あんな走ったから汗…恥ずかしいっ!)


そう思いながらカバンからタオルを出し、額に当てる。



男性は本を読んでいるが、時折窓を見つめ横を向くので、由美はその隙に男性を横目でちらっと見る。



(今日もかっこいいな…)

由美は隣を盗み見ながら頬を染める。


(……って、これじゃあ本当変態!?)

自分の行動に自己嫌悪しながら由美は視線を前に戻す。