ひつじがいっぴき。


わたしはぽかんと口を開けたまま、井上先生の言葉に耳を傾ける。


そんなわたしの頭には、『まさか』っていう思いが敷き詰められていた。


「――そんな時だったっけ……。

俺の声で眠れるようになったっていう子から手紙がきたんだ。

こんな形で引き受けた臨時パーソナリティーだったけど、それでも誰かの役に立つんだとわかったことが嬉しかった」


まさか……。

やっぱり、それって……それって……。

『アラタさん』は、『井上先生』だったってこと?


驚きで口いっぱいに広がる唾をゴクンと飲み込むと、井上先生はまた話を続けた。


「その子とはもう会えないと思っていたんだけれど、まさか教育実習で自分が行くことになった学校で出会えるなんて思いもしなかった。

君に出会って話しをした時、俺がどんなに驚いたかわかる?

話してみるととても可愛いし、素直でスレてなくて……俺の理想の子どストライクなんだもん。

もっと近くにいたいって思ったら、つい自分の電話番号まで教えてしまって、引かれたかなとか思ったり……」


わたしの脳裏に過ぎったのは、放課後のあの日、女の子たちに囲まれていた時のことだ。

手紙を見た女の子たちに井上先生は好きな人からもらったものだと言っていた。



それって、それって……。

パクパク、パクパク。

わたしの口が開閉を繰り返す中――。