「島主殿が我が城を出られる際私がこの国を目指し東へと行く事をお聞きしまして、城主に申し上げたところ、大変東の方は物騒だからと二日ほどお心を痛められました。が苦心した末決断されました。失礼を承知で追いかけ護身用にと持って渡して来なさいと私は申し使いました。
それを旅の途中に目立つ御方ですから聞きながらここまで来たのですが・・途中で・・お家の恥を主君の心にも裏切り行為をしてしまいました。申し訳・・」

ほろほろと静かに泣き始め自分でハンカチで目頭を抑えた。

ああ。

なんだかんだツンデレ言っても、こいつは必死でその危険だっつうなか立派に役を果たすために追いかけてそんなとこからこの日本だったのか?まで追いかけて追いかけてやってきて頼まれた品を渡せずに奪われて死んだわけだよな。

悔しいよな。

ちょっと俺同情したかも。

「お前までなんで目がうるうるしてるんだよ。気持ち悪い。」

チ。アイツが突っ込んで来ると

オトメンモードが切れたよ・・

「人の顔を忘れないという意味は分かった。私がそうである故それはいいのだ。だがその時のことをもうかなり忘れかけているであろう?」

「はい。そうなので御座います。折角またお会い出来たというのに・・」

「ルカ。幽霊って残留思念みたいなもの?だったらすごくよく覚えてるんじゃ・・それにこれは公務?」

それ俺がきいたっちゅうに。でも後半は同意。

「んーよくわからんが頭をぶつけたらその辺のときのことを忘れてしまったりするであろ?これは私達の回収したいキオクではないが、島の話であるから、一応公務であるな。」

「衝撃による健忘ね。」

「であるとか、昔のことは思い出しにくかったり鮮やかにハッキリと思い出すのはむつかしくなるであろ?」

「まあね。オバアサンとかオジイサンとかそうだね。」

たしかに換算するとスーパーババアじゃん。見た目若いけど。

「あとは心を特に痛めた事柄については知っているかは分からないが・・人間という生き物は苦しいままだと脳がもたないので消去していく。それも嫌なことや苦しいもの結構どうでもいいことその生きる妨げになるような記憶も然り。」

「へえ?・・・ルカ医学とか興味あったっけ?」

「ないが。人間の精神と記憶については勉強しているつもりだ。」

アイツがこんどはやっちまった。
って顔をする。
その顔を見るのは普段ならへへってなるけど・・

今日は悪いけどザマーミロって気分にはならない。
むしろ・・いつものアイツってこんな気分なのか。って思う。

「以上の人間であったお前に起こった出来事や今の状況を推測して話をしているのだが結論から言うとなにか・・曖昧なのではないか?」


「・・・・はい。そうなのでございます。」

「ルカその時の記憶は・・?」

≪悪いがまだない。≫

「あるにはあるが・・」

どういう意図なのか俺らにだけ聞こえるようにテレパスしてきた。

「この女がものを持って追いかけているという記憶や盗まれた記憶は当人ではないゆえ持ち合わせてはおらんのだ。なにか手掛かりになるものがあればいいのだが・・すでに島は動いている。記憶の淵にかかった布でも良いなにか思い出せぬか?」

ああ・・公然とないって言えないのか。この会話はつまり・・もう公になっているってことだ。

「・・・・・布で御座いますか?そういえば・・・着物と申しましたでしょうか・・。貴方が朝身に付けていた衣服で御座います。」

着物ってずーーーっと前からあるじゃん。

「その着物にいや・・・記憶のどこにでもよい・紋所・・いや家紋のようなものは入っているか?」

「ええ・・ぼんやりと・・ですが入っていたように思います。筒に丸い中に模様でございます。」

ん??筒に?

「よし。それなら辿れるかもしれぬ。今からお前の頭の中をここに映すぞ。」

ルカはその女の子の頭に手をかざしなにやら集中している。

すでに記憶の集合体なのだ・・人間相手とは違うんだろう。

「難しいな。一番大きな渡さねばという記憶が邪魔をして入りにくい。」

脳の手術をしている先生と助手みたいな感じ。

アイツが汗拭き始めたときから俺お菓子食べてんだけど・・・。

スクリーンが昔のテレビのザラザラした砂嵐みたいになって・・移り始めた。

ちょっとレースとこの人の服だろうな。。男・・何人だ?画質悪っ

人間と・・風景と・・・向こうの口元・・そして・・

「あれって・・・葵の・・」俺知ってる・・ぞ。

「言うな!」

テレビが血にそまりプツンと消えた。

ああこのあと死んじゃったんだ・・。

なーむーって・・まじか?葵って・・

神妙な顔をしている二人と??な二人。いや一人と幽霊。


「これは・・・ちょっとあれだね。手が出せないね。」

「いや・・出せる。」

え??

「お前はこういう風に言われたはずだ。我々が直に渡しておくと。この紋所はこの国で一番高貴な者が持つもの・・のようなことを。」

「・・は・・たしか・・そのようなことで・・奪われたかと存じます。主に申し訳が立たないゆえ直接渡す・・と取り返そうと思ったら・・」

「無礼者触るなと。」

切り捨て御免か・・。

ん???

「ルカ。手は出せるってどうゆうこと?どうして何を言ったか分かったの?」

「口の動きだよ。何を言ったかはね。後は・・あの紋所は完全に偽物である。」

とルカが言った瞬間に≪真・真・真・真・真≫と出てきた。これも問答に入るのか?

ひえ〜

ちらっと見ただけで分かる流華もすげえけどそれが合ってるか間違ってるか言える賢者もすげえな。

「つまりあの時代に遡ってあの風景で場所を割り出しその頃それらを名乗っていた輩なら手は出せると?」

ルカは静かに頷く。

「だが・・そんな盗賊のような輩・・売り払うか価値も分からずモノによっては捨てるかしているはずなのだ・・時代もかなり前だからどこまで流通しているのか・・そこまでは分らない。後生大事に持っていてくれれば話は早いのだが。」

「そうだね。でも貴族とか伯爵家もマークを入れてるよね。」

「ああ。贈り物にも入れるはずだ。封書までは見つからないとは思うのだが・・その土地にまつわる貴金属系等や宝飾銃などなら・・話を聞いていると身を守るもの・・武器か体を労わるものだと思われる。そうゆうものなら誰かは持っていると思うのだが・・」

「武器っていうと刀とか?」

「いやこの者達は当時から刀を持たぬ。猟銃か小型拳銃のようなものか・・家紋が入った壷か・・ティーカップやソーサーのセットか・・湿布か・・万病に効くような薬なのか地方の宝石なのか・・・そこまではわからん。」

「二日悩んだけど持たせたものって・・・見たらすぐ使い方がわかるものだよね。」

「うん・・まあその地方のことをどれだけ熟知していたかにもよるが私はお前の城に長く滞在したのだったな?」

「そうでございます。3年ほどお世話をさせていただきました。」

≪三年???ルカなんでわかったの?推測?思い出した?≫

≪推測だ。≫

≪思い出すわけないだろ。ルカは寝てるときしかキオクの夢を見ないんだぞ。≫

≪いやたまに強い夢だと昼も見るが基本的にはそうだな。いきなりはつじつまを合わせたように見れない。≫

≪じゃあなんで3年?≫

≪この者がちょっと立ち寄っただけにしては執念が強いのと・・その当時の私との体の関係はないような話し方をするのと・・あとはこの女が外国人であるのに日本語が流暢なことだ。3年とは言っていない長いこといただろうと言ったら向こうが3年だと言ってくれただけだ。≫

≪か・・からだの・・≫

≪そこじゃないでしょ。さすがだね。僕もそこまでは・・不思議だなとは思ってたんだけど日本語に対しては。≫

≪推測で話しすぎるとボロが出るから思い出話を避けていたんだが、そこから広がる情報もあると思ってな。もっと推測を言うとこの女に日本語を教えたのは多分私だ。傍で使えたと言っているしな。長い間言葉も通じなかったら使えていても苦労するだろう?勉強するか聞くしかない。≫

≪ルカが教えたのか?≫

≪。。。。先代のな。≫

ああ。そっか。そうだよな。

≪じゃあなんでこいつは女と男の区別がついてないんだ?≫

≪推測の域でしかないが・・・男であってもこの顔だ。爺様はよく女子に間違えられたと言っていた。私はよく男に間違えられたが。子供のころ。≫

それは分かる気がする。
愛想っつうもんがないし。
こんなに髪長くなかったし。

要は中性的な顔ってことかね。

≪推測で組み立て行くしかない話なら着物をスカートと勘違いしてもおかしくないよね?≫

あ。そっか。

≪うん。今の私も先代も言えることなんだがこの純血という立場はあまり変わらない。なんの服でも多分気にしない。こいつの城にいるときはこいつらの服を着てたんだろう。名前も大した意味を持たないし女であっても男であっても同じだと思うのだ。だから今の私にも雰囲気をがらっと感じさせる違和感がない。と思う。≫

そういう感じか。

んで自分のとこの正式な格好を浴衣から着替えさせるのにクローゼット勝手に開けたら

自分とこの家で貴族様やらが着るようなお召かえがあったので服を着せたついでに髪もセットしたのか。

メイド魂か?

「いけるかもしれない。」ルカが呟いた。

「どうしたの?」アイツは尋ねる。

「今身元が割れたんだが・・・」

すげーな神咲ネットワーク。
たまには役に立つんだな。

「どうしていけるかもなの?」

「その性悪が今は大成して斎藤グループとかにまでなっているらしい。仮にだが・・先祖がそれによって大金持ちになった転機のものを一時的に失ったとしても・・多分日本人なら家宝みたいに取り返すと思うのだ。」

「なるほど・・金は天下の周りものじゃない・・いや皮肉なことにそうだね。ラッキーアイテムとして美術館か家に貯蔵している可能性は事実を捻じ曲げて存在するのかもしれない。もしかすると・・」

アイツも話に加わってきた。

そ。そうゆうもの?俺後ろめたくて嫌だな。持ってるの。

「でもさあなんて言うよ?幽霊がここにいて?それは私のものだからって言うわけにも」

「そうだな。それに向こうは多分書き換えたであろう古文書を歴史という名で押し付けてくると思うな。」

ルカは俺の意見に賛成した。

ああ。そうかだからルカは歴史やら勉強を覚えるのは嫌だというんだな・・。

「合ってるかどうかもわからないもの」と言ってたし。

こうやってきて聞いてると本当に200年前とかの人の落書きとか都合のいい事実を習わされてるのは

腹が立つよな。

「じゃあどうするの?」

「盗む」

!!!!!

「もともと私のものなんだからいいだろう。」

そ そうゆう問題?法律的なものとか会社の関係とか色々は??

「盗むのはよくありません。」

メイドもしっかりと言ってきた。

「黙れ。盗まれた分際で。」

キビシー・・・

シュンってなっちゃったじゃん。