野球男子が恋をした。



隣で動く気配がした。


ガサゴソと何かを取り出す音がしている。


横目でチラッと見てみる。


取り出しているのは音楽プレーヤーとイヤホンだった。


___……音楽聴くんだ…_



自分でも、気づかないくらい見つめていたらしい。


名前もわからない彼女は、驚いたように目を見開いて、ジッと俺を見据えた。


「…音楽好きなんですか?」


控えめに、でも目を輝かせ言ってきた。


初めての会話だった。


「まぁ………ちょっとだけ」


俺は、音楽なんて、ろくに聴いたことなかった。


音楽の授業で眠い目をこすりながら聴いてるくらいだ。


それでも、あれだけ純粋な目で聞かれたら好きだとしか言えなかった。


それに、どんな音楽を聴くのか…知りたかった。


「どんな音楽、聴くの?」


俺の問いには答えず、彼女はそっと右耳のイヤホンを差し出してきた。


「………っと、こ…れはー…」


使ってもいいのかわからなかった俺は1人あたふたしていた。


そんな見て、ふわっと笑った彼女は力強くコクリと頷いた。


そのあとに


「どうぞ」


そう言って。