約束~始まりの場所~

桜の家もやっぱり停電していて薄暗い。


階段を上がって、桜の部屋の前に立つ。


「桜…?」


名前を呼んでドアを開けた瞬間、

桜が俺に飛び込んでくる。


一瞬バランスを崩した後、

俺はしっかりと彼女を抱きしめる。


「もう、大丈夫だから。」


泣きじゃくる彼女を優しく抱きしめ、

耳元で囁く。


桜は返事をする代わりに背中に回した手で

俺のカッターシャツをギュッと握る。


「来るの遅くなってごめんな。」


そう言って俺も、抱きしめる腕に少し力を込める。


外はすごい雨が降っているようだ。


相変わらず鳴り響く雷に桜は怯えている。


その度に"大丈夫だから。"と俺は囁く。


それしかできない自分を情けなく思いながら

桜をしっかり抱きしめる。