くまさんといっしょ

「おまえんち、タッパくらいないのか?」

「あるよ。えと、これ、とか、これ‥」

ごそごそと戸棚をあさり、熊に手渡す私。

受け取った熊は、軽くそれを洗うと、手際よくレンチンしたほうれん草や茹でたもやしを詰めていく。

熊に何でもやしをレンチンしないのか聞いたら、色が黒くなるから、と返してきた。

熊、本当にまめまめしい。

結局断りきれなかった私の家の狭いキッチンで所狭し、と動き回っている。

テーブルには、お野菜がいっぱいのった温麺が。

「冷めないうちに食え。」

「うん。いただきます。」

手を合わせ、お箸を持つ私。

「‥おいし!」

うまいよ、これ。

なんだろう。すごく優しい味がする。

「乾麺はまだあるからな。めんつゆも冷蔵庫に入れたぞ。」

「ありがとう。」

あらかたキッチンを片すと、熊がキッチンから出てくる。

「じゃ、また明日な。」

「え?く‥高嶺さん、食べないの?」

「俺はもう帰る。またな。」

私の頭にぽん、と手を置くと、玄関に向かう熊。

「っありがとう!明日、会社でね。」

「おう。」

にやり、と笑ってドアの向こうに熊が消えた。

時計をみれば、もうすぐ0時。

悪い事しちゃったな。

手の中のどんぶりを見て、ごちそうさま、とつぶやいた。