くまさんといっしょ

記憶の発掘作業は諦め、そっと床に足をおろし、恐るおそるドアへと向かってみる。

そぉっとドアを開け、外を覗くとそこはどうやらリビングスペース。

黒いソファが見える。

そして、いい匂い。

んん?

そっとドアから外に出て、匂いをたどると、キッチンに立つ熊1匹。

「高峰さん?」

「おぉ、起きたか?」

起きましたとも起きましたが私はなぜここにいるんでしょうか?

「っか?」

言いたかった言葉はうまく口から排出されず、出た音は“か”のみ。

「は?」

眉間に皺を寄せる熊。

「いや、あの、いや、えーと、私、どこ?」

「あぁ?まだ酔っぱらってるのか?ここは俺の家。

顔洗ってこい。飯だ。」

顎をしゃくって洗面所を指し示す熊。

「タオルは出てるから。使え。」

ふらふらと熊の顎の方向に向かい、取りあえず顔を洗う。

化粧落としなんてなかったから、石鹸で2度洗い。

「高峰さーん、ローションかクリーム、ない?」

「ヌベアならあるぞ。」

ほい、と差し出す熊。

わぁ、懐かしい。確か最近見直されてるよね。

こしこしと顔にクリームを塗りこみ、鏡を覗きこむ。

すっぴん、がきんちょみたい。

昔は老け顔だったはずなのに、いつのまにかガキくさい顔になっていた。

っていうか、私、幼稚園の頃と顔変わってなくない?

「めし!」

むにむにと顔をいじっていたら熊の声が飛んできた。